デザインの本というと、グラフィックメインのものが多い印象ですが、こちらの本は見るというより「読む」という動詞が合うと思いました。と言っても、決して掲載作品が少ないわけではなく、文章がしっかりしているのです。例えるなら、教科書でしょうか。総ページ数288ページに相応の充実した内容で、読み応えがあります。

表紙に「高品質なデザイン460選」とありますが、その看板に偽りはありません。資生堂・キリン・ヤマハなど、誰もが知っているブランド・メーカーの広告デザインや、第一線で活躍するデザイナーが手掛けた良質な作品が収録されています(ポスターなどの広告や、書籍の表紙が多め)。「こんなデザインをつくりたい」と憧れを覚えるような素晴らしいデザインをたくさん浴びることができ、まるで美術館を訪れたような読後感です(私はDOT MARC JACOBSの香水ボトルのデザインに心奪われました。IHIのロゴをモザイクアートにしたブランド広告も圧巻です)。

本書は「レイアウト」「配色」「写真とイラスト」「タイポグラフィ」の4つの章で構成されており、プロが使う58もの技術、すなわち不滅のデザインルールが実例とともに詳しく解説されています。コラムでは「ブランディング」「ユニバーサルデザイン」「ジェンダー・ニュートラル・デザイン」など昨今のデザインにおいて重視されている考え方についても取り上げています。

どちらかというと、デザインの基礎を学んだあと、より専門的にデザインを学びたい人向けのように感じました(恥ずかしながら、私は「デペイズマン」という技法をこの本で初めて知りました)。デザイン初心者にも分かりやすく書かれているデザイン本に比べると、実用性では劣るのかもしれません。それでも、手元に残して何度も読み返したい。しっかり読み込めば、ワンランク上のデザイナーになれるのではないか、と思わせてくれる一冊です。

「なるほどデザイン(※)では物足りない」「ずっと使えるデザインのルールを知りたい」「プロフェッショナルが手掛けた高品質なデザインをたくさん見たい」そんなあなたは、こちらの本を検討してみてはいかがでしょうか。

※なるほどデザインも素晴らしいデザイン本です。何を隠そう、私が初めて購入したデザイン本でもあります。なるほどデザインに書いてあることを自然にできるようになってから、不滅のデザインルールを読むと良いと思います。

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なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。 [ 筒井美希 ]