まずは手に取って、この美しい装丁を見て欲しいと思います。金の箔押しで描かれた孔雀の文様(ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」の1894年版表紙をアレンジしたもの。孔雀の文様についても、動物文様のカテゴリで「女王の象徴」として解説されています)とカリグラフィ。光を当てる角度を変えてキラキラさせながら、いつまでも見ていたい表紙です。

無論、美しいのは表紙だけではありません。ヨーロッパの装飾と文様で彩られたあらゆるデザイン(天井画・柱などの建物、絵画、壺・皿などの調度品、宝飾品、絨毯や刺繍など)の鮮明な写真が豊富に掲載されており、眺めているだけで幸せホルモンが分泌されそうな一冊です。

本書は大きく3つの章で構成されており、第1章では古代文明からゴシック、ロココ、アール・ヌーヴォー、アール・デコなど、18の様式における装飾・文様の歴史と構造について。第2章では幾何学・植物・動物・昆虫・ファンタジーの5つのカテゴリ別に74のモチーフの文様の起源や発展・込められた意味などについて。第3章では「装飾文様の展開」と題して、文様がどのように使われたのか、ステンドグラスやレースなどの展開別に詳しく解説されています。

私はアール・ヌーヴォーのデザインが好きで美術館を訪れるのですが、第3章の「宝飾の歴史」のページにアルフォンス・ミュシャ作のペンダントの写真が掲載されているのを見つけたときには心躍りました。

本を開くとついうっとり眺めてしまいますが、装飾と文様についての専門書ですので、日々のデザイン制作にもしっかりと活かすことができます。見出しやフレームなどのあしらい、パターン(柄)などのアイデアを得るのに最適です。古代・中世ヨーロッパのデザインは、ファンタジーの創作をするときにも参考になりそうです。巻末に索引がついているので、例えば「太陽を使った装飾のデザインってどんなものがあるだろう」といったときにも容易に探すことができます。

「美しいものを見て感性を磨きたい」「ヨーロッパの文化・デザインが好き」「あしらいやパターンの参考資料が欲しい」そんなあなたは、こちらの本を検討してみてはいかがでしょうか。

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